



1958年にホンダから発売されたスーパーカブです。このカタログは1964年に初の90ccタイプであるCM90型が発売されたときのものですが、スーパーカブという名前は1958年のC100型(50cc)から現在に至るまで変わらずに使われていますね。
もともと1952年に発売された、自転車に取り付ける小型エンジンキットが『カブF型』と呼ばれていました。それには赤いエンジンカバーが付いていましたので、現在でもホンダのイメージカラーは赤ですね。タイプRシリーズのヘッドカバーも赤、小型耕運機や除雪機、発電機も赤、このカタログの表紙なんてバイクだけでなく、乗っている方の服装や飛んでいる飛行機の模様まで赤ですね。
ホンダ初の四輪車、S500はこのカタログの前年、1963年に発売されたばかりなので、当時はまだ四輪に参入して間もない頃です。しかし二輪では最後の頁からも分かるように、すでに『世界のホンダ』になっていますね。
さて、スーパーカブですが、もう紛れもなく名車中の名車です。輸送用機械としては世界最大の製造・販売台数を記録し続けているのもうなずけますね。昨年の50周年の時点で6000万台とのこと、ここまで来たらきっとこの先自動車業界がどうなろうとも、スーパーカブの生産だけはなくなりそうにありませんね。
それにしても『世界のナイセストピープル ホンダに乗る』というコピー、とても違和感を感じませんか?実はこれ、対米輸出を始めた当時のホンダが行った『ナイセストピープルキャンペーン』から来ています。当時、アメリカでは『バイクに乗るのは悪い人』という風潮があったらしく、そんな中で拡販していくために、『バイクに乗るのは悪い人が多いかもしれませんが、ホンダのバイクに乗る人はみんないい人です』という意識付けを大々的に行いました。『You meet the nicest people on a Honda』というキャッチコピーをさわやかで善良そうなカップルや家族がカブに乗っている写真とともに紹介し、米国内におけるバイク乗りのイメージを『イージー・ライダー』のデニス・ホッパーから『サザエさん』の三河屋・サブちゃんぐらいに変えてしまいました。ケネディ大統領をして『ホンダがアメリカの青少年に新しいライフスタイルを与えた』とまで言わしめたほどですから、相当の意識改革だったのでしょうね。
ホンダ・スーパーカブ(CM90)
車両重量 : 83kg
エンジン : 空冷4サイクル単気筒OHV 86.7cc 6.5PS
最高速度 : 90km/h
変速機 : 前進3段リターン自動遠心式